クリスマスイブの夜。ブロードウェイの「・・・劇場」のひさしの下にいる。
観劇後のVIPをホテルへ送るため待機しているのだ。
年も押し迫った頃、こんなところに好んで独りでいる人間はいない。
生活の糧を得るためと自身に言い聞かせ、寂寥の思いを殺し、己を無感覚に保ちつつ、
歩道を行くファミリーや通り過ぎるイエローキャブやらを眺めていた。

今朝この街に到着した時には10℃を超えていたが、寒波の到来により急激に気温は下がっている。
そして呪わんかな、雪は降り始めた。
歩道を歩く人々は大喜びではしゃぎ回っている。
絵に描いたような、陳腐なドラマにも出てきそうな完璧なホワイトクリスマスだ。
白い肌に眩しいほどの金髪をまとう姉妹は、テキサス辺りから来たのだろうか。
初めて雪を見たようで、はじめは恐れるように、恥らうように雪に触れていたが、そのうち積もり始めた雪を嬉々として集め、かたまりをつくり投げあっている。
「メリー・クリスマス」の声も高らかに、こちらに向かって投げられた雪を受け止め、苦笑いを返すしかできない独り身の、根無し草がここにはいた。
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